保険不要論は本当か?元金融機関職員が考える保険の本質
最近は保険というと「見直しが必要」「損する」というイメージも広がってきたように思います。「投資一本で良い」「保険は不要」のような過激な意見も目にします。
元金融機関勤務で保険も売っていた私からすると、「保険自体は悪い仕組みでは無くむしろ必要なものだが、見直しが必要な人も多いだろうな」というのが正直な意見です。
今回は個人的な勤務経験を交えつつ、保険は本当に無駄なのか、という事について語ってみたいと思います。
「保険は損」は正しいか
まず簡単に仕組み的な話をしますと、保険会社は加入者から集めた保険料を運用し、保険事故が発生した人へ保険金を支払います。その過程では社員の給与やシステム維持費、営業経費なども必要です。
そのため、加入者全体で見れば支払った保険料の総額は受け取る保険金の総額を上回ります。期待値だけで考えれば、保険は基本的に損をする仕組みになっています。
それでも保険が存在するのは、必要な場面があるし期待値だけでは結論を出せない部分があるからです。
保険ではなく保険の売り方を研鑽している
個人的に保険に悪しきイメージを持たれる原因は、ほぼコレだと思います。
見出しの通りですが、保険を売る人が何をしているかと言うと「保険の売り方」を研究しています。
個々のお客様に最も合う提案を···なんて考えて勉強している人は知りません。(私の周りでは、という話です)
これは本当に問題だと思うのですが、保険を売っている人は保険を売ると売っただけインセンティブ(お金)をもらえる仕組みになっているからです。
売ってなんぼ、売らなきゃ実入りが少ないし、肩身も狭い世界です。
(セミナーの姿をした営業会場で)営業を受ける側になって話を聞いていると「今不安を煽ってるな〜」「信頼させるために言ってるんだろうけどこの言い方はグレーと言うか黒だろうな」など色々なテクニックを使っている事がよく分かります。
保険だけ売っている人は、ほぼ保険のことしか知らない事もありますし、正直最適な保障をつけている人はかなり少ないのではないかと思っています。
万が一に備える
保険の魅力は「万が一に備えられる」、これに尽きます。
”起きる確率は低いが、起きてしまった時の金銭的インパクトが大きい場合”に保険は最大の力を発揮します。
身近で分かりやすいのが火災保険です。家は人生で最大の買い物とも言われます。これを失うと金銭的なダメージが大きい。
しかし、実際に火事等になる確率は低いので、そこそこの保険料で大きな保障をつけることが出来ます。
損害保険と言われるものにこのタイプが多いです。個人的には最近は自転車保険で身近になったがまだまだマイナーな個人賠償責任保険はイチオシです。
契約であることから拘束力がある、保険会社が運用を行うことからお金が増える事がある、みたいなメリットははっきり言ってオマケです。よく分からなければ、この副次的な効果群は切り捨てて考えると失敗は少なくなるでしょう。
インフレ
これは今後意識しなくてはいけない問題だと思います。
保険は「起きると分かっている時」は入れません。ガンになってからはガン保険に入れないし、入院が決まってからでは医療保険に入れないのです。
これは(健康なうちに加入する必要があるということでもありますが)お金を払う時点と保障を受ける時点が違う事が想定されていると言うことです。
つまり、インフレ下では貨幣価値が高い時にお金を払い、貨幣価値が低くなった所で給付を受ける可能性を警戒しなくてはなりません。
特に長期での契約は注意が必要です。
私の90歳の祖母は、高度成長期=インフレ期に年金保険に加入しました。自営業で公的年金が少ないから、一生懸命安くはない保険料を払っていたのです。
金利が5%を超えて銀行にお金を預けているだけでどんどんお金が増えた時代です。40年後にどうなったでしょうか?
インフレで貨幣価値は下落し、一生懸命払った保険料は雀の涙ほどの年金に変身しました。
インフレ下では、長期の貨幣価値の棄損を織り込んでいない定額の契約は不利です。
今後同じような事が起こる保証はないですが、警戒はしても良いと思います。
私の場合
さて、ここまでは一般論ですが、ここからは私個人の趣向バリバリの話をします。こういう考え方もあるんだな、と聞いてもらえればと思います。
先程、保険が生きるのは”起きる確率は低いが、起きてしまった時の金銭的インパクトが大きい場合”だと言いました。
繰り返しになってしまいますが、このような事象に備えるための保険は最優先で加入を検討したら良いと思います。
しかし、実は私はこれ以外の保険にも入っています。
医療保険です!特定の入院では無期限で入院費が支給されるもので先進医療特約とガンの診断一時金特約を付けています。
今は入院が短くなっているので医療保険は要らないという判断も正しいです。ただ、万が一超長期入院になった場合は負担が大きいので精神衛生的な問題で加入しておきました。
先進医療特約は100円程度で数千万円の保障が付くので、一定の合理性があると思います。可能なら、これ単体で入りたいくらいです。
ほぼ使われないのでこの保険料になっているのですし、火災保険とは違って「治療しない」選択肢もあるので、これまた趣味の域ではあります。
最後にガン診断特約、こちらはガンと診断されると一時金が出るタイプです。
ガンは日本人の死因1位と言われて久しく、「万が一」とは言えません。高額療養費などの制度を利用すると金銭的な負担も耐えられないほどでは無いと言われることが多いです。
それなのに、なぜガン特約をつけているかと言うとガンになって、治療費の心配もするなんて嫌だからです!悔しいからです。
そう、何と気持ちの問題でした。(ガンになると罹患前と同じようには働けなくなるリスクもあるのでその点も考慮しましたが)
私は金銭的な合理性だけが合理的な判断とは思っていないので、このような選択になりました。この選択が最適だとは思っておらず、がん治療なども変化していますし、見直しは適宜行うつもりでいます。
まとめ
保険はきちんと自分に必要な分に入る分には「もったいないもの」ではありません。必要経費と割り切って良いと思います。
問題は、なかなか自分に必要な保障が分からないことです。しかし、どうなるか分からない未来の事象に備えるのですから、最適な保障というのは仕組み上誰にも分からない事でもあります。(ただし、ガン家系である等、保険者が考慮出来ない事柄に基づいて意思決定する場合は一定の合理性があると言えます)
最後に必要なものを決めるのは自分の心です。保険(に入り過ぎて)貧乏にはならないよう留意しつつ、総合的なダメージが大きい事象に対する保険から優先的に加入を検討すると良いでしょう。